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「楽器の科学」から(2)
同じ本から

「楽器の材料の湿度管理は、実に大切な要素だ。
 静岡県内を走る新幹線が、天竜川の鉄橋のすぐ西側の地点にさしかかると、山側にピアノ用の材木をたくさん野積みしてねかせてあるところが見える。北海道をはじめ、日本全国から、カバ、カエデ、エゾマツ、ブナなどの木が、また海外から、ラワン、チーク、ローズウッドなどの原木が持ち込まれる。
 楽器に使う材料は、多かれ少なかれ、このように時間をかけてねかせる。この間に自然に水分が抜け、材質が均等になって行く。1~10ヶ月から、長いものでは2~6年も置く。この間に、生木の50から20パーセントの水分が、15~20パーセントぐらいにまで下がる(生木を池に入れておくと、生木の重さの1.2倍ほどの水分を含むようになる)。
 このあと、人工乾燥にかけ、均等に水分を8~9パーセントぐらいにする。これも湿度の低いアメリカ向けなどでは、4パーセントぐらいにする。
 面白いことに、木は水分が完全に抜けることはない。そうなると、木はバサバサの状態になり、粘りがなく、とても楽器には使えないものになってしまう。楽器でも机でも、適度の水分が必要なのだ。・・・」

こういう記述を見ると、270などの木製ボディのハーモニカはまた、ピアノ、バイオリン、ギター、木管楽器などの木の使い方とは違う使い方をしているように状態を長く続けようという工夫が見られます。しかしハーモニカの場合は、塗装されない部分が直接息の流れにさらされます。演奏後はかなりびしょびしょの状態になります。当然、木は水分を吸って膨れ上がることになります。マウスピースがあるクロマチック・ハーモニカではその様子はあまり目立ちませんが、10 holesや複音ハーモニカでは付記口がよく盛り上がってきます。唇に触れると痛いくらいになります。

中学のとき、複音ハーモニカの盛り上がった部分をナイフで平らにしてみたことがありましたが、乾燥するとその部分が窪んでしまい、困ったものでした。

T楽器で木部に水分よけの塗装をしたところ、音色が変わってしまったという話も聞きました。

270で使われている木は洋梨なのか、かなり柔らかいものです。その柔らかさがあの柔らかい音色を作っているのかもしれません。香港のカスタム・ハーモニカ・メーカーでは、黒檀のボディを作ってくれますが、そのような硬い木では音色が変わってしまうかも知れません。

Heringの初期のクロマチック・ハーモニカは熱帯の木を感想が不十分なまま使ったのでよくボディが割れたということをD.Gardnerさんに聞きました。それを改良するため、一時合板製のボディが使われたことがありました。立て目と横目の木を接着剤でくっつけたベニヤ板のような感じでした。割れないようにとの工夫なのでしょう。そうこうするうちにプラスチックに代わってしまいましたね。

今は木製ボディ、アルミ・ボディ、銀ボディ、プラスチック・ボディなどの音を比較することができますが、私には270や古い280の音色が好きです。銀製は持っていないので論ずることもできませんが、Amadeusの透明感のありすぎる音はそれほど好みに合いません。新しい280のプラスチック・ボディの音は古い280の音とは随分違います。リードの差もあるかもしれませんが古い280の音色が好きな人も何人か知っています。しかし、オークションで入手した古い280などは、さすがに50年以上も経過しているため、乾燥しすぎのひび割れが必ずといってよいほど見受けられます。それを接着剤でくっつけて再生する作業もまた楽しみでもあります。

あまりまとまりのない文章になってしまいました。(/_;)
by chromclass | 2006-02-24 23:22 | 課題 | Comments(4)
Commented by tsudda at 2006-02-25 00:43 x
木製ボディの膨張については、馴らし吹き(※ボディーが過剰な水分を含まぬように15分~1時間で演奏を止めて乾燥させる)を2週間~1ヶ月程行うという話が、10ホールズ奏者達の間で実践されていると聞きますが、メーカーの取説や教則本でも特には見掛けないので、戸惑うユーザーも多そうです。初めてのクロマティックに270が推される事が多いようですが、そのようなメンテの部分でややこしくもあり、本当は注意が必要でしょうね (かといって、プラスティックボディーの3オクターヴモデルにもそれぞれ気になる点があり、個人的に悩ましく思います)。ハーモニカという楽器は、リードの違いの他にも、リードプレートの厚みやメッキの有無、ボディーの素材・形状、カヴァーの素材・形状、スライドのタイプやマウスピースのサイズ・形状等によって音色に差が生じるはず。となれば、もっと其々にヴァリエーションがあって然るべきと思うのですが・・・。そういえば、以前崎元さんが「真鍮でシルバーコンチェルトに似たものを試作して貰ったら、思いのほか良い音がした」という風に話された事があったのを思い出しました(詳細は不明です)。
Commented by chromclass at 2006-02-25 00:59
マリンバンドを使う人はそうするようですね。全体の水分の含有率を均等にする効果があるに違いません。

香港で例のメーカーの人に真鍮ボディのはどうなんだって聞いたのですが、あんまりよくないって言ってました。銀製有利の理由付けかも知れません。何しろ吹いていないのでよくわからないのです。まあ、銀製のも吹いていないので、比較は出来ないですね(苦)。

Super64Xって、リード・プレートを厚くしてありますね。あれは明らかに音色が変わります。あの機種を愛用する人はたくさんいます(先生に右へならいかな)が、私はどうも音色が好きになれません。昔の280でアルミプレートのがありますが、あれも厚みがあるので音色が違います。プレートが暑いというのは、エア・タイトにする効果が一つありますね。リードが厚みの中で振動するので薄いときとはかなり違う空気の流れになると思います。
Commented by tsudda at 2006-02-25 01:42 x
英語の話せない自分は、海外というだけでコミュニケーション不全に陥る為、chromclassさんが羨ましいです。銀と真鍮の差は、純粋な性能差というより音色のヴァリエーションと捕らえるのが妥当なのでは?と想像します。それにしても強気な価格設定ですね~アレ。結局HOHNERやPOLLEと競合して、結果売れないのではという気も・・・

(以下長文の為、レスを分割します)
Commented by tsudda at 2006-02-25 01:44 x
同様に、64Xについても「価格差≠性能差」と私は捕らえています。下2オクターヴが2重で上2オクターヴが1枚となったリードプレートを見ると、(愛用者の方々に対し、大変心苦しいのですが)中途半端な仕様だなぁ、と思ってしまいます。確かにリードによって適切なプレートの厚みというのがあるのでしょうが、(16穴中)8穴のCと9穴のCが、片や普通に1,05mmのプレートで、もう一方が2,1mmの2重プレートというのは、少々納得し難い点です。そもそも、64Xを除いた他の4オクターヴモデルは何故プレートの厚みが揃って1.05mmなのでしょう?3オクターヴモデルでも1,05mmと1,3mmの2パターンがあるのに、より長大な低音域のリードを含む4オクターヴモデルに1,3mmがないのは明らかにおかしい。吹き応えやバルブの動作を考慮すると、どうしても1,05mmだけのラインナップが不完全なものと思えてならないのです。標準配列(ショートストローク)の4オクターヴモデル等も、需要はあるのではないでしょうか。
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