「クロマチックハーモニカにはドの音がたくさんあります。シの♯、シと同じ穴のド、レと同じ穴のド。」
トラックバックした招き猫さん、のんさんがこのことについて論じておられます。
それぞれのリードが微妙に音色が違うことをリードの味と表現しておられます。いい表現だと思います。
ところで、なぜこれらの「ド」の音色に違いが出てくるのでしょうか。答えは簡単で、同じ音なのに違う長さのリードが使われているからです。
常識的にはリードが長ければ音程は低くて、短ければ音程は高い。ならば、同じ音程の音のリードは同じ長さなのではなかろうかと思うわけなのですが、現実は違うのです。
リード・プレートを眺めてみると、この写真で見るようにリードは右から左へと長さが単調減少するように並べられています。これは外側から見たものですが、分解してみると内側でも同じです。つまり「ド」が2枚並んでいてもレと同じ穴のドの方が短いリードが使われているのです。
これは実際の音程の高さというよりは、見た目の美的感覚を優先しているからに他なりません。以前は、同じドの音の音色が違うのが気になるので、調律で同じ音色になるように試みたことがありましたが、使われているリードの長さが違うことがわかってからは、その努力はやめにしました。長さが違うのですもの、どうしようもないとのあきらめです。
現実問題として、複数あるドの音程は、音色が違っても同じであるべきです。ところが、練習によってリードは劣化して行くのでこれらの音程にも違いが出てくることがしばしばです。修理屋としてリード交換をやって、全体の調律具合も見ることが多いのですが、大抵複数のド、および複数のド#の音程が違っていることが多く、部分調律を施してあげることが多いです。これは、つい両方のドを咥えてしまった時に、複音ハーモニカのようなうなりを生ずるのですぐわかります。これは中々気落ちの悪いものですから、ご自分で調律できる方は特によくチェックしておくべき点です。
まあ、そういうわけで、複数のドの味が違うという現象が出てくるのですが、奏者としては製造元に文句を言ってやりたいところでもあります。